HOME » 保険の知識全般 » 医療保険に通院保障特約を付ける必要性はあるのか?
年々進化している医療保険の特約
病気やケガで入院した時には、入院給付金として1日あたり数千円〜数万円をもらうことができ、また入院中に手術をした時には手術給付金として、入院給付金の金額に応じて数万円〜数十万円をもらうことができる医療保険。医療保険のはじまりは1970年代はじめ、外資系生命保険会社が「がん」に特化した保険(がん保険)を発売したことを皮切りに、病気やケガ全般に対応して給付金が受け取れるタイプの保険を開発・販売した事から始まりました。
医療保険の誕生から約50年弱の年月が経過し、その間に国の医療制度や病院の診療報酬制度が改正され、これに準じるように生命保険会社の医療保険もまた、新しい特約(オプション)を開発・販売したり、保障内容全体を見直したりと進化を遂げてきました。
その進化の中で、近年新たに開発・販売された特約の一つに「通院保障特約」があります。今回、この通院保障特約は付ける必要があるのかないのか、様々な観点からご紹介していきます。
通院保障特約の必要性を知る上で大切な内容は、「通院保障特約の内容はどのようなものか」「現在の病院や医療制度はどうなっているのか」「病気ごとで通院する割合(日数)はどのくらいなのか」の3点です。
それぞれについて詳しく説明していきます。
通院保障特約の必要性について考える前に、生命保険会社の医療保険の特約である通院保障特約の内容はどのようなものなのか、その内容についてはじめに見ていきましょう。
主な通院保障特約の特徴は以下となっています。
・(病気やケガによる入退院後)通院した場合、入院日額給付金と同額の給付金が受け取れる
・入退院後120日以内における通院が通院給付金の対象
・1つの病気による通院は通算30日(30回)の通院までが通院給付金の限度
1つずつ解説していきましょう。
まず初めに、医療保険に付けることができる通院保障特約は、一般的には病気やケガで一度、「入院・退院」をすることが条件となっています。この入院・退院は、日帰り入院でも対象とする場合もありますが、すべてにおいて入院・退院を経ないと給付の対象とならないことに注意しましょう。また、通院保障特約で受け取ることができる給付金の金額は、入院給付金の金額と同額である事が多く、入院給付金が1日あたり5,000円であれば、通院保障特約における通院時の給付金も1回あたり5,000円となります。
続いて、通院の制限についてですが、こちらも一般的には入退院後120日以内における通院を対象としていることが多いです。一部、がんによる通院については無制限としている場合もあります。また、通院回数の制限も設けている場合があり、1つの病気による通院回数の制限は30日(30回)などのように上限が設けられていますので、こちらについても注意して確認する必要があります。
続いて、通院保障特約の必要性を考える観点の一つとして、現在の医療制度から見る治療方法の変化を見ていきましょう。
詳しく解説すると、今、病院における患者の診察・治療に対する方針が大きく変化してきています。これまでは一人ひとりの患者に対し、完治するまで入院し、完治後の経過観察のために通院するという治療方針が主流でしたが、病院の診療報酬制度が改正され、その後は完治前でも退院し、通院治療に切り替えるという治療方針に変更されてきました。
診療報酬制度とは、患者の方が病気などで来院された時に、診察料で◯点、レントゲンで◯点、投薬で◯点といったように、治療の一つ一つを点数制とし、その点数の合計点に対して全体の治療費を割り出し、患者の方は自己負担3割、残りの7割が国負担となっていたのですが、この負担割合が改正されました。入院期間が一定以上になると7割負担であった国の治療費補てん割合が減少し、病院側で足りない治療費を補わなければならなくなりました。これにより、病院側としては短期で退院させ、病院側の負担をなるべく減らすように変化してきました。
また、厚生労働省では在宅医療ケアを推進していく方針を出しており、厚生労働省としても、少子高齢化に伴う国の医療費負担を軽減させるため、出来る限り入院は短期化、通院治療で基本的には自宅で治療をするという事を推奨しているのです。
このように、現在の医療制度から見る治療方法の変化から見ると、今後は医療保険本体の契約である入院による保障よりも、入退院後の通院に対する保障の方が今度、重要さを増していくことがお分かりと思います。
前述では、国や病院側から見る医療制度、治療方法の変化について見てきましたが、では実際に病気になった場合、どれくらいの通院日数がかかるのかについて見ていきましょう。
旧社会保険庁における平成19年度の主な病気の平均通院日数調査では、
・悪性新生物(がん):7.25日
・高血圧性心疾患:36.65日
・虚血性心疾患:9.18日
・脳血管疾患:6.92日
・糖尿病:20.56日
・肝疾患:8.88日
・腎臓の疾患:22.88日
となっております。
糖尿病ではインスリンを利用されている方は定期的に通院しインスリンを投与しなければいけなく、また腎臓の疾患も同様に、退院後も経過を見るために通院しなければならないため、必然的に通院日数は多くなっています。この通院日数に乗じて、1回あたりの治療費用、病院までの往復の交通費等がかかってくるため、通院治療も高額になりがちであるという事がお分かりになるかと思います。
ここまで、通院保障特約の内容、現在の医療制度から見る治療方法の変化、主な病気の平均通院日数を見てきましたが、これを元に考えると、通院治療特約は必要であることが分かります。むしろ、今後の病気の治療方針の変化に対応するためには、主契約である入院給付金の金額を低めに抑えつつ、通院保障特約の給付金を高く保障できるタイプの医療保険が必要性を増していくとも言えるでしょう。
医療保険に関わらず、生命保険の特徴として年齢が若いほど保険料は安く、高齢になるほど保険料は高くなっていきます。そのため、医療保険を検討するのに適切な年齢は20代〜30代であると言えます。それ以上になってしまうと、保険料自体が高くなってしまい、見なおそうとも見直したら高額となってしまうという事態が起きてしまう場合があります。20代〜30代の方では上記に挙げたような大きな病気はもとより、病気になった事がないという方も少なくありません。
そのため、入院日数はどれくらいなのか、通院して治療する必要があるのかなどの知識をほとんど持っていないという方が非常に多いです。また、若いうちは病気が治るのも早く、わざわざ保障を持つ必要はないと思われる方も少なくありません。しかし、ご自身の年齢が上がり、高齢になるほど病気の完治までに時間がかかり、入院期間・通院期間も長期化していくことに加え、その時になってはじめて医療保険を見直そうと思っても、保険料自体が高額となってしまい、見直したくでも見直せないという事態に陥ってしまう可能性があるのです。
ぜひ、医療保険を検討する時は、通院保障特約が付けられるタイプのものを検討し、通院保障特約を付けることによって多少保険料は上がってしまいますが、医療保険に限らず生命保険は、「将来起こりうるリスクに備えるもの」ですので、将来的に困ることがないよう、いかに「将来このような事態になったらどうなってしまうか」をイメージし、後悔ない医療保険選びをして頂ければと思います。