保険商品の中で、一番仕組みが「分かりにくい」のが「終身保険」と言われています。実を言えば、保険を扱う外交員でさえ、なかなか終身保険の説明ができない人が多いこともあって、保険会社によってはあまり積極的に販売していません。
といっても、実際新卒の会社員が加入する生命保険には、必ず「終身保険」+「定期保険」のセットになっているケースが少なくありません。保険会社とすれば、終身保険は一生お客様を「離さない」特別の商品にもなっているのです。
さて、終身保険とはそもそもなんでしょうか?終身…つまり「一生」という意味の保険であり、加入してから死ぬまで決まった保険金が出ますよ、という趣旨の保険商品なのです。これだけ聞けば「なんだ、葬式代か」と考える人もいるでしょう。そこで、終身保険の保険金額を200万円ほどに設定する商品が勧められます。葬式代は200万円もあれば、大丈夫…これが、200万円という金額の根拠です。
ですが、実際は終身保険は非常に使い勝手の良い面を持っています。30歳の男性が3000万円の終身保険に加入したとします。いつ死亡しても3000万円残せるわけですから、家族は安心です。ですが、その支払い方が肝心です。
掛け金は、55歳で払込を終了、60歳で払込を終了、と、一生涯払い込むのでは支払い総額も変わりますし、月々の掛け金も変わります。当然55歳で支払いが終わり、あとは要らない場合は月々の掛け金が高くなります。
短期で払い込んでしまうことを「短期払い」といいます。短期払いの場合、メリットがあるのです。それは、『掛け金を払うと、積立もできる』という終身保険独特の仕組みが出て来るからなのです。養老保険は積立型の保険ですが、実は終身保険も「積立型」の保険なのです。
使い方はこうです。30歳で加入、3000万円の終身保険に加入したとします。短期払いで、60歳で払込終了。仮に、掛け金は月々5万円としましょう。45歳の時に子供が18歳になったとします。大学入学の資金を捻出しようと、この終身保険の一部を解約します。3000万円のうち2000万円を解約し、残りの1000万円の終身保険にするのです。
すると、解約返戻金が戻って来ます。もし、15年間支払った総額900万円ですが、解約返戻金が300万円あれば、これを学費に使えるわけです。よく計算すると、15年も払えば、払った掛け金よりも戻る額の方が多くなることがよくあります。
終身保険は上手に加入すると、養老保険よりも金利のよい商品になる可能性があります。これは、外交員によく聞いて、加入するのが一番です。
終身保険のランキングは「人気と利率」ではかなり異なります。巷で「人気のある終身保険」は、保険会社が「目玉」として宣伝しているものがほとんどです。ですから、ここでは「返戻率」を使ってランキングを付けてみましょう。
例えば、累計100万円の掛け金(保険料)を支払い、20年後に解約して120万円の解約返戻金を得た場合「120%の返戻率」ということにしておきます。もし、同じ120%の返戻率で、掛けた年数がより短ければ、その方が「お得」ということになります。
1.アクサダイレクト 終身保険 月々56,910円 返戻率 112.7%(60歳時)
《計算条件》保険金3,000万円・加入年齢30歳・保険払込終了60歳・男性
2.東京海上日動あんしん生命 長割り終身 月々12.950円 返戻率110.5%(70歳時)
《計算条件》保険金500万円・加入年齢40歳・保険払込終了65歳・男性
3.ソニー生命 終身保険 月々25,630円 返戻率109.6%(65歳時)
《計算条件》保険金1,000万円・加入年齢35歳・保険払込終了60歳・男性
4.ジブラルタ生命 米ドル建終身保険(低返戻) 月々131.1$ 返戻率117.3%(60歳時)
《計算条件》保険金100,000$・加入年齢30歳・保険払込終了60歳・男性
上記は代表的な例を挙げています。 ランキングとしての比較は難しいのですが、ポイントをいくつか見てみたいと思います。
1のアクサダイレクトの場合、返戻率が高いのがポイント。ただ、保険金額が3,000万円と300万円では同じ返戻率ではありません。ただ、ネット生保ならではの事業効率の良さから、これだけのお得感が出ていることがわかるでしょう。
2、東京海上日動ですが、長割り終身は「低解約返戻金型」と呼ばれる商品。例では40歳時に加入し、65歳で払込終了ですが、この終了時以前に解約した場合は保険料累計よりも少ない「元本割れ」になります。65歳の払込終了時にいきなり解約返戻率が高くなる、というものです。ですから、途中解約は損になります。
3、ソニー生命の場合、利率変動型終身保険と呼ばれる商品です。この例では平均的な利率を2%(保険における2%は一般的な銀行預金の半年複利金利とは違い、20年、25年といった長いスパンでの利率を指します)に設定しています。最低保障が1.6%で、これは商品販売時に設定が変わることがあり、一度加入した商品の最低利率は変わりません。この終身保険は払い込んで行く保険料と解約返戻金の額は、ほぼ同じか平行に推移していくのが特徴です。
4、ジブラルタ生命の終身保険ですが、2の東京海上日動あんしん生命と同じく「低解約返戻金付」という商品。そして、払込も米ドル、保険金も解約返戻金も米ドルです。そのため、契約時の為替レートと、解約時のレートの差があることから、日本円でいくらの保険金、解約返戻金なのかがわからない反面、為替レート如何では差益・差損が大きくなり、商品としての特色が濃いものと言えるでしょう。
このように、終身保険ひとつとってみても、各社各様で様々な特徴があります。この辺りは各社の担当者の好みもあるのが実情です。ただ、あまり返戻率にこだわらない、各種手続きが確実な会社を選ぶのが一番大事なのはいうまでもありません。 保険FPと呼ばれる人たちに相談する場合は、出身保険会社をまず聞くこと、そして保険での解約返戻金の手続きについてわかりやすく説明してもらった人に、よく相談してみることです。