自分自身で運用先を指定する「確定拠出年金」とは?
今、国から受け取れる定年後の年金は、受け取り開始の年齢が65歳からですが、以前は60歳から受け取ることが出来ました。今、この国の年金の受け取り開始の年齢を70歳にするという議論が国会で行われています。
このような、国の保障の変化を背景に、2001年より私的年金として「確定拠出年金」が導入されました。
すでにお勤めの会社で確定拠出年金を導入している会社もあるかと思いますが、そもそもどのような仕組みなのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
現在、公的年金は大きく分類して「国民年金」と「厚生年金」の2つがあります。自営業者の方や会社にお勤めの方の配偶者の方は国民年金のみに加入することができ、厚生年金は会社にお勤めの方が加入することができる「上乗せ年金」になります。他にも、公務員の方や病院にお勤めの方は「共済年金」と呼ばれる上乗せ年金がありますが、この国民年金・厚生年金に加えて上乗せ年金として利用できるのが確定拠出年金となります。
このような年金の仕組みについて、分かりやすく図に示すと以下のようになります。
[年金の仕組み図]
上記の図のように、自営業者の方は国民年金の上乗せ年金として、「国民年金基金」または「確定拠出年金(個人型)」に加入することができ、サラリーマンの方は国民年金・厚生年金の上乗せ年金として「確定拠出年金(個人型)」または「確定拠出年金(企業型)」に加入することができます。
今回はこの確定拠出年金の仕組みとオススメについてさらに詳しくご紹介したいと思います。
まずはじめに、確定拠出年金は大きく分類して、「企業型」と「個人型」の2つのタイプに分かれます。この2つの違いはその名の通り、「企業型」は毎月の掛け金を支払うのが会社であるのにたいして、「個人型」は毎月の掛金を個人が支払います。会社員の方で会社が確定拠出年金を導入している場合は、「企業型」として加入・支払いをしており、自営業の方などは「個人型」に加入し、自分自身で加入・支払いをしています。また、勤めていた会社で「企業型」の確定拠出年金に加入していた方が、退職後に「個人型」に切り替えて、退職後は自分自身で支払って確定拠出年金を続けるという方法もとれます。
また、「企業型」と「個人型」は、それぞれ毎月掛けられる金額に限度があります。それぞれの加入状況によって限度額が異なりますので、以下の図をご覧頂ければと思います。
[確定拠出年金の限度額一覧表]
同じ確定拠出年金の「企業型」「個人型」であっても、他の年金の加入状況によって、確定拠出年金に掛けられる毎月の掛け金の限度額がありますので、注意が必要です。また、サラリーマンの方で確定拠出年金の「企業型」と「個人型」両方に加入することはできませんので、こちらも注意が必要です。
一般的に「企業型」の確定拠出年金に加入した場合、掛けた年金を受け取る権利を得るためには、最低3年以上加入しなければいけません。例えば、入社すぐに「企業型」の確定拠出年金に加入したが、2年で退職した場合、これまで掛けた確定拠出年金の受給権を得ることができないことに加え、「個人型」へ切り替えることも出来なくなってしまいます。
上記の図にあったように、特にサラリーマンの方は確定拠出年金を「企業型」
または「個人型」のどちらかで加入することができます。但し、会社で「企業型」の確定拠出年金に加入している場合、社員の方は原則全員加入となります。未だ確定拠出年金を導入していない会社にお勤めの方であれば、「企業型」と「個人型」のどちらかを選ぶことができます。それでは、確定拠出年金の「企業型」と「個人型」ではどちらがお得なのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
通常、確定拠出年金に加入した場合、銀行や証券会社が加入した確定拠出年金を管理・運営します。この時に、銀行や証券会社に管理・運営費用を支払うことになります。
主な管理・運営費用は以下の項目となります。
・ 国民年金基金連合会に支払う手数料
・ 運営管理機関手数料
・ 事務委託先金融機関手数料
これらの費用が、「加入者」「運営指図者」に対してかかってきます。
「企業型」の場合、「加入者」および「運営指図者」は従業員、「個人型」の場合、「加入者」および「運営指図者」は加入したご本人となるため、手数料という面においては「企業型」でも「個人型」でもどちらもご自身が負担(掛け金の中から差し引かれたり、毎年3月時点の運用益から差し引かれる)するため、違いはありません。
従業員または加入者本人にはどちらの方が得ということはないという事がお渡り頂けたと思いますが、それでは「企業型」と「個人型」の違いとは何なのでしょうか。
一つ目は、「企業型」の場合、契約者が確定拠出年金を導入している「法人」となるため、導入している法人は、確定拠出年金にかかる費用を全額損金参入できるのです。全額損金算入できるという事は、法人税の優遇措置として利用することができるため、「企業型」として採用している法人が増えているのです。
二つ目は、先ほど述べた通り、「企業型」の場合、従業員の方が確定拠出年金を受け取る権利を得られるのに、最低3年以上加入している必要があるということです。「個人型」の場合、加入した直後に年金を受け取る権利が発生するので、加入期間が半年であっても1年であっても、掛けた分に対して年金を受け取ることができます。3年という縛りがある分、従業員(年金を受け取る本人)にとっては制約というデメリットがあります。
このように、確定拠出年金の加入を検討している方であれば、加入年数の制約のない「個人型」の方をオススメいたします。
最後に、確定拠出年金で受け取れるお金に対する税金の扱いについてご紹介します。
確定拠出年金は、いくつかお金(給付金)を受け取れる種類があります。60歳・65歳以降に受け取れる「老齢給付金」に加えて、障害状態となった場合の「障害給付金」、死亡してしまった場合の「死亡一時金」、また、途中で脱退したときの「脱退一時金」があります。
それぞれのお金を受け取った時にかかる税金について見ていきましょう。
はじめに、基本となる60歳・65歳から受け取れる老齢給付金については、雑所得として所得税の種類の一つが課税されます。雑所得は「(受け取る金額)−(積み立てた金額)=利益」に対して20%の税金がかかります。
続いて、障害給付金については、非課税で受け取ることができます。
死亡一時金の場合、お金を受け取ることが出来るのが遺族(相続人)となるため、相続人1人つき500万円までの非課税枠があります。500万円を超えた部分について相続税がかかります。
最後に脱退一時金ですが、これは1回だけの受け取りとなるため、一時所得と呼ばれる所得税の種類の一つが課税されます。一時所得は、「(受け取る金額)−(積み立てた金額)−50万円」に対して20%の税金がかかります。
このように、同じお金であっても、受け取るお金の名目によってかかってくる税金が違ってきますので、注意する必要があります。税金がかからないと思っていたら後々になって税金を支払わなければならなくなったという事にならないよう、しっかり理解しておくことが大切です。