学資保険といえば、子供への定期預金の名目で毎月貯金するイメージ…それが一般的です。生まれたばかりの子供に最初に掛ける生命保険とすれば、学資保険。仮に毎月1万円ずつこの保険に加入すれば、年間12万円貯まることになり、10年後は120万円。大学や専門学校に入学する18歳の時点では、単純に216万円が貯蓄できることになります。
ですが、学資保険の場合は216万円の支払い額以上の金利分(返戻金)が付いてくることが魅力のひとつでしょう。例えば、216万円支払って、230万円の満期になって戻ってくれば14万円もの差益があることになります。これは銀行の定期預金ではあり得ない金利。銀行の0.01%などといわれる金利から見れば、実に100倍もの高金利商品ともいえるのです。
学資保険は、銀行の定期預金と単純比較できないのが金利です。日本生命やアフラック、ソニー生命などが「返戻率120%」などと表記している学資保険商品がありますが、これは単純に100万円を支払って20万円の金利が付く、ということなのですが、銀行金利とはなかなか比較しにくいのが現実です。
そこで、敢えて比較してみるには、次のような方法があります。まずは、銀行へ預ける場合「半年複利」という方法に統一してみます。現在では、ネット銀行で0.2%前後の金利が最高ですが、都市銀行などでは0.02%が一般的です。
ちなみに半年複利で毎月1万円を銀行口座に積立し、金利が0.2%の場合は、18年後に積立元金は学資保険同様の216万円。さて、問題は半年ごとに20.315%の税金が発生すること。税額を差し引いた金利分は31,329円で、元利合計=つまり払い戻し金額は2,191,329円になります。
学資保険の返戻率を考える場合は、まずこの数字を見るのが基本になります。毎月1万円の保険料を支払い、18年で246万円になる学資保険の場合は、金利分は30万円付くことになりますから、単純にいえば金利は0.2%の約10倍近いことになります。実質的には1%台後半というのが返戻金の利率、ということになるのです。
戻り率に関していえば、何年積み立てるのか、いくら積み立てるのかで金利は複雑に計算が変わります。ですが、18年よりも17年で積立が終了し、一年で積み立てる12万円分が元金にプラスされる商品ならば、まず1%半年複利の金利が付いている、と考えるのがよいでしょう。保険商品は満期金に課税されませんので、定期預金よりも有利といえるのです。
銀行の定期預金や投資信託を利用している人の多くは、3年・5年といった時間軸で金融商品を考えているようです。中には100万円、500万円、1,000万円といった預金を預けっぱなしにしている方も少なくありませんが、銀行に預ける場合に考えたいのが「金利」と「税金」。そして銀行自体の倒産も考えて、口座に預ける金額の上限も気にしなければなりません。
もちろん、預金者には保護機能がありますので、実際に取り付け騒ぎになるような事例はまだ皆無ですが、10年後や20年後の経済状態によっては預金の分散をした方が安全、という時代になっているのは確かでしょう。
さて、学資保険が銀行預金と違う点は、生命保険会社の規模の大きさが上げられます。業界中堅の太陽生命保険株式会社の場合、総資産は6.7兆円(平成26年3月末現在)ですから、銀行でいえば地方銀行の伊予銀行(松山市)と同程度の規模といってもよいでしょう。伊予銀行は2013年(平成15年)、国内の銀行では26番目の総資産額6.9兆円。
ところが、太陽生命の場合は保険契約高が21兆円にも及びます。保険契約高とは、契約している「保険金額」の合計をいい、仮に全ての加入者が保険事故(死亡等)に遭い、保険金を支払わなければならない額が21兆円に及ぶ、という意味。総資産額の3倍にも及ぶ保険金額を保有していることになるのです。
もちろん、実際には一度に全ての保険契約者が死亡することは、保険会社を経営する以上想定していません。ですが、保険会社は常に保険金額を満額支払うための厳しい基準で運営されていることだけは確かなのです。
学資保険の場合は、必ず受取ることが出来る保険金が用意されている商品ですから、保険会社は万全に将来の支払い資金としてしっかり保有し続けています。例えば、子供が12歳で一時金、18歳で満期金を受取る契約では、必ずその全額を支払います(犯罪などの保険事故は別)。
戻り率の計算については、よく「係数」を用いて計算する方法が知られています。ですが、ここではもっとも簡単な計算方法を考えてみましょう。例えば、こともが0歳のときに学資保険に加入し、18歳で満期になる場合です。18年間毎月保険料を支払って、満期保険金が300万円になったと仮定します。300万円÷12ヶ月÷18年=13,888円ですが、仮に12,000円の保険料ならば2,592,500円。つまり、408,000円の黒字、ということになるのです。戻り率は市中金利と比較すると、ややこしいのですが、いくら支払っていくら戻ってくる、と考えれば、非常に簡単なのです。保険会社を選ぶ際は、そこを計算するのが早道です。