子どもの進学資金を積み立てる学資保険
生命保険会社の商品の1つに、子どもが進学する時にかかってくる入学費や授業料などのお金を準備するためのものとして、学資保険と呼ばれる、お金を積み立てるタイプの保険があります。学資保険は亡くなった場合の死亡保障や病気やケガで入院した場合の入院保障などの保障を極力なくし、「お金を積み立てる」という事だけを目的として販売されているもので、積み立てた後に戻ってくるお金が、銀行預金などよりも高い利率がプラスとなって戻ってくるため、子どもがいる方に非常に人気の商品となっています。
学資保険に関わらず、生命保険の商品には大きく3つの登場人物が存在します。
1つ目は「契約者」と呼ばれる登場人物です。契約者は、加入する生命保険の契約をする人であり、また加入する生命保険の保険料を支払う人を言います。契約者の方には、生命保険の加入の時に、お勤め先の情報や年収、職種などを申告していただく必要があります。生命保険の保険料を支払うために十分な収入があるかという事を見られます。
2つ目は「被保険者」と呼ばれる登場人物です。被保険者とは、加入する生命保険の保障の対象となる人を指します。被保険者の方が亡くなった場合や入院した場合、また積み立て系の生命保険であれば満期の年齢に達した場合に、加入している生命保険を使うことができたり、満期金としてお金を受け取ることが出来るのです。被保険者の方は生命保険に加入する時に、過去や今の病歴、入院歴を申告していただく必要があります。現在病気を患っているにも関わらず、それを告げずに生命保険に加入し、加入直後に生命保険の保険金を受け取るといった不正を防止し、また本当に健康な方との不公平をなくすため、過去から今にかけて、どのような病気を患ったことがあるか、入院した事はあるか、今も治療中なのか完治しているのかなど、細かく申告する必要があります。
3つ目は「受取人」と呼ばれる登場人物です。受取人とは、被保険者の方が亡くなったり入院したりして加入している生命保険の保険金が出ることになった場合に、その保険金を受け取る人を指します。受取人の方は生命保険の加入の時、加入に際して特段何かを申告する必要はありません。一般的には受取人の方は契約者の方、もしくは被保険者の方とする事がほとんどです。死亡保険金の受取人であれば、ご両親や配偶者の方を受取人とす事が多いです。受取人の方は契約者の方、被保険者の方が生命保険に加入したという事をご本人の方から聞かない限りは分かりません。そのため、被保険者の方が亡くなったり入院したりして保険金を受け取る対象となった場合でも、受取人の方にあらかじめ生命保険に加入している事を教えておかなければ、保険金の請求をする事すらできないのです。受取人を契約者、被保険者の方とは別の方にした場合、生命保険に加入した時にキチンと受取人の方に加入した事を伝えておきましょう。
さて、学資保険も同様に、加入する場合に契約者、被保険者、受取人を決める必要があります。学資保険の被保険者は必ず、お子様としなければならないため、どのような場合においても被保険者は同一人となりますが、ご家庭によっては契約者、受取人は様々な方を設定されるケースがあります。主に、子どもがいる家庭のご主人とされるか奥さまとされるかの違いが多いのですが、それぞれのケースについて見ていきましょう。
もっとも一般的な形として、契約者をご主人、受取人をご主人とする場合です。ご主人は一家の大黒柱であり、お金を稼いでくる方でもあるため、契約者となる事がもっとも多いです。また、受取人もそのままご主人とする場合も多いです。この場合、学資保険によって受け取ったお金は、「所得税」の課税対象となります。学資保険という名前ではありながらも、分類としては、自分自身で定期預金に加入し、満期となったら定期預金のお金を一括で受け取った場合と同じ扱いになるのです。
この形で学資保険に加入し、例えば途中でご主人と奥さまとが離婚された場合でも、あくまで学資保険における登場人物はご主人とお子様であり、また保険料を支払う人、満期金を受け取る人ともにご主人であるため、奥さまには特に何の利益もなければ、税金がかかるといった事はありません。例えば、お子様を奥さまが引き取り、ご主人が学資保険の満期金を受け取った後に、子どもに満期金を支払ったという場合は、また別の贈与税などの対象となる場合はあり得ます。その場合は親権者である奥さまと相談の上、どれだけの学資金を渡さなければいけないかを決めた上で、年間110万円以上渡す場合には贈与税がかかるなど税金のことも考慮しなければいけません。
次に契約者をご主人、受取人を奥さまとした場合の学資保険を見てみましょう。学資保険の保険料を支払う方がご主人、積み立てられたお金を受け取るのが奥さまという事ですので、学資保険の満期金を受け取る時にご主人・奥さまが引き続き婚姻関係にあった場合は、相続税の課税対象になり、仮に離婚関係にあった場合は贈与税の課税対象になります。相続税の課税対象の場合、配偶者の相続税の非課税限度は1億3,000万円までは相続税がかかりませんので、学資保険の受け取りに関して特段心配する必要はありません。しかし、離婚関係にあり、贈与税の課税対象となった場合には、満期学資金が110万円を超える分について、20%の贈与税が課税されてしまいます。例えば、満期学資金が200万円の場合、110万円までは非課税ですが、残り90万円のうち20%が贈与税の課税額となりますので、18万円を贈与税として支払わなければいけないのです。
契約者のをご主人、受取人をご主人場合と奥さまの場合とで見てきましたが、例えば契約者が奥さまの場合でも同じことが言えます。
それぞれのパターンを図に示すと以下のような形となります。
一時所得は、満期金として受け取ったお金と、そのために積み立てたお金の差額部分、つまりプラスとなった部分に対してのみ課税対象となり、プラスとなった金額が50万円を超えた場合に一時所得の所得税がかかります。逆にプラスとなった金額が50万円未満の場合には一時所得の所得税は一切かかりません。
対して、贈与税はプラスとなった金額に関わらず、受け取ったお金が年間で110万円以上となった場合に、110万円を超えた金額に対して一律20%の贈与税がかかってきます。
同じ金額を受け取る場合であっても、一時所得で受け取るか、贈与税で受け取るかによってかかってくる税金の金額は大きく異なります。当然、所得税(一時所得)の方が支払う税金は少なくて済みます。そのような場合も想定し、契約者をご主人とするのか奥さまとするのか、受取人をご主人とするのか奥さまとするのかをキチンと選ぶ必要があります。保険加入中であれば、受取人の変更を行うことも出来ますので、すでに学資保険に加入しており、契約者の方と受取人の方を別々にされている場合は、契約者の方と受取人の方を同じ方に変更されることをおすすめいたします。またどうしても受取人の変更が難しいという場合は、契約者の方を受取人と合わせるという事も可能です。様々な方法でもっとも税負担のない方法を取ることができますので、万が一の場合はファイナンシャルプランナーの方や税理士の方に相談してみると良いでしょう。