変額個人年金保険とは?
生命保険会社が取り扱っている「個人年金保険」という商品を聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。60歳や65歳など、契約時に年金の受け取りを開始する年齢を決め、それまで毎月、毎年一定の金額を積み立て続け、年金の受け取りの年齢に達するとそれから毎年一定の金額が年金として5年間や10年間という期間受け取ることができるというものです。国民年金や厚生年金などを「公的年金」と呼ぶのに対して、個人の方が任意で加入することができる年金なので「個人年金」と言います。
通常の個人年金保険は積み立てられたお金を保険会社が運用するため、年金の受け取り金額は契約時に決められた金額を必ず受け取ることができます。加入した方は年金の受け取りの年齢まで積み立て続ければよいだけというものになります。これに対して積み立てたお金を契約した自分自身で運用するタイプの商品を「変額保険」と言います。変額保険は、あらかじめ保険会社により定められた複数の運用先があり、その中から積立てるお金の配分を設定します。
運用先の中には、ハイリスク・ハイリターン商品と呼ばれる「世界株式型」や「新興国株式型」、「日本株式型」などがあったり、ローリスク・ローリターン商品と呼ばれる「世界債券型」や「日本債券型」などがあったりして、自分の投資性格に合わせて配分を決めることができます。そしてその運用の結果、運用成果が良かった場合は受け取れるお金が増えていき、また逆に運用成果が悪かった場合は受け取れるお金が積み立てたお金よりも減ってしまうという特徴があります。
変額個人年金保険は、この変額保険のように自分自身で運用先を指定し、その運用成果に応じて受け取れるお金が変動し、そのお金を契約時に決めた年金の受け取り年齢に達したときに5年間や10年間という期間に分割し、年金形式で受け取ることできるという商品です。
個人年金保険と変額個人年金保険は同じ「個人年金保険」ですが、細かく見るとそれぞれ少し異なった特徴を持っています。
個人年金保険と変額個人年金保険のそれぞれの特徴は以下のようになっています。
それぞれ違っている部分について詳しく見ていきましょう。
生命保険料控除というのは、会社員の方であれば毎年10月から11月頃になると会社から用紙が渡され、そこに現在加入している生命保険の種類や年間で支払った保険料の総額を記載し、生命保険会社から送られてくる書類(ハガキ)と一緒に提出すると、12月の年末時に年末調整という名前でお金が戻ってくるものです。
自営業の方や個人事業主の方であれば、毎年2月中旬から3月中旬まで行われている確定申告によって同じようにお金が戻ってきます。
これは、その方の年間の課税所得額を正しく申請し直すことで、払い過ぎた所得税が返ってきているというお金です。所得税は収入に応じて税率を掛けて毎月の給料から差し引かれます。
収入が減るほど支払わなければいけない所得税が減るのですが、生命保険料控除は、その方が生命保険に支払った保険料を収入から差し引いて良いという性格を持っています。毎月の収入に応じて所得税を引いていたのが、実は生命保険料を支払っていたので、実際の収入はもっと少ないということを税務署に申請することで、払い過ぎた所得税が戻ってくるのです。
このような特徴を持つ生命保険料控除ですが、控除には3つの枠があり、それぞれの枠で収入から差し引くことができる保険料の上限が決まっています。3つの枠は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」と呼ばれます。一般生命保険料控除は、保険の対象となる被保険者の方が亡くなった場合に死亡保険金が支払われる生命保険に加入していた場合にその保険料を差し引くことができる枠で、介護医療保険料控除は、被保険者の方が病気やケガで入院・手術をしたときに給付金が支払われる医療保険や、介護状態となったときに保険金が受け取れる介護保険に加入していた場合にその保険料が差し引かれる枠です。最後の個人年金保険料控除は、その名の通り、個人年金保険に加入していた場合に個人年金保険に支払った保険料が差し引かれる枠です。
生命保険料控除はこの3つの枠があるのですが、個人年金保険と変額個人年金保険とでは、該当される枠が異なります。個人年金保険はそのまま個人年金保険料控除として計算できますが、変額個人年金保険料控除は一般生命保険料控除として計算されます。
これによりどのような事が起きるかと言いますと、例えば通常の生命保険と変額個人年金保険の2つに加入していた場合、通常の生命保険で一般生命保険料控除の枠を使いきっていた場合は、変額個人年金保険の保険料は控除の対象とならず、お金が戻ってくる対象にならないという場合があります。
生命保険料控除について図で表しますと以下のようになります。
個人年金保険と変額個人年金保険の積み立て方法の違いとして、変額個人年金保険には積み立て方法に「一時払い」があります。一時払いとは、変額個人年金の積み立てに必要な保険料を一括で支払う方法です。通常の個人年金保険では、運用を保険会社が行うため、積み立て金額に上乗せして受け取れる年金額を増やそうとした場合、運用に時間がかかってしまいます。
そのため、個人年金保険では月払、半年払、年払のいずれかの方法による積み立てしか行っておりませんが、変額個人年金保険の場合、運用するのは加入している方本人であるため、一括で保険料を支払い、そのお金を元手に運用した場合、運用の成果によっては個人年金保険で必要な期間よりも短い期間で利益を上乗せして年金を受け取ることができます。そういった理由から、変額個人年金保険では一時払も取り扱っています。
では、一体どのような方が変額個人年金保険を一時払で加入するのでしょうか。
加入されている方の多くは、会社勤めを終え、退職金を受け取った方が退職金を増やすために加入されるという方が多いです。退職金を受け取ったものの、直近で使う用途がなく、置いておくだけではお金が増えないため、変額個人年金保険で運用してお金を増やすという方がもっとも多いです。変額個人年金保険では、最短10年程度の運用期間で資産を増やすということもできるため、定年退職を迎えてお金の使いみちがないという方に向いている積み立て方法となります。
最後に、変額個人年金保険のメリット・デメリットについて紹介したいと思います。
変額個人年金保険のメリット・デメリットは以下となります。
[変額個人年金保険のメリット]
・運用成果によっては積み立てた金額よりも大きい年金が受け取れる
・将来的なインフレに対応している
[変額個人年金保険のデメリット]
・運用成果によっては積み立てた金額よりも受け取れる年金額が少なくなる場合がある
上記が変額個人年金保険のメリット・デメリットとなります。個人年金保険という商品自体、生命保険や医療保険と違い「保障」という側面はなく、「資産形成」という側面のみとなります。その中でも変額個人年金保険は通常の個人年金保険と比べて自分自身で運用を行い、その運用の成果によって受け取れる年金の金額が変動するので、メリットになり得る反面、デメリットにもなってしまうのです。