誰もが自分で老後資金を準備しなければならない時代になり、安定的に貯蓄ができる個人年金保険が人気になっています。多くの種類がある個人年金保険ですが、加入の目的や条件によって、自分にはどのようなものが合っているのか、よく検討しなければなりません。どのような点に気をつけて加入すればいいのでしょうか。今回は個人年金保険を比較する上での3つのポイントを解説していきましょう。
★個人年金保険の特徴
まず加入するにあたって、なぜ個人年金保険で貯蓄するのかを考える必要があります。個人年金保険にはどのような特徴があるのでしょうか。
個人年金保険のもっとも大きな特徴は、銀行で預金するよりも資産を増やすことができる点です。個人年金保険ならば、返戻率が110%を超えるものも少なくなく、中には120%を超えるものもあります。10年間で100万円を積み立てるプランで考えると、返戻率が110%の個人年金ならば、100万円が110万円に増えることになります。しかし銀行での預金ならば、金利は年間0.02%程度です。毎月10万円ずつ積み立てても、10年後には1000円弱しか増えません。どちらがお得かは一目瞭然です。
また銀行での預金ならば、なんらかのライフイベントがあったときに取り崩してしまったり、毎月の貯金額を少なくしてしまうこともあります。しかし個人年金保険の場合は強制的に契約した保険料が引き落とされるため、確実に貯蓄していくことができるのもメリットです。このような特徴をもつ個人年金保険ですが、主に3つのタイプがあり、自分にあったものを選択することができます。
★加入の目的によって保険のタイプを選択
①確定年金
個人年金保険の中でももっとも一般的なのが「確定年金」です。確定年金は受けとる年金の総額が最初から決まっている個人年金で、5年、10年、15年などの期間が設定できます。設定した期間が終わると年金の受け取りはできませんが、受けとれる総額が決まっているため、老後の資金計画が立てやすいというメリットがあります。
ある保険会社のプランでシミュレーションしてみましょう。
・契約者:30歳男性
・年金受け取り期間:10年
・年金総額:2000万円
上記の条件ならば、毎月の保険料の支払いは「5万1580円」で、支払う保険料の総額は「1856万8800円」になります。毎年200万円=毎月約16万6000円受けとることができる計算です。返戻率は「107.7%」になります。
確定年金は受けとれる期間が決まっているため、国民年金や厚生年金などや、その他の貯蓄で充分に生活費をカバーできる予定だという人に向いています。確定年金は老後の余剰資金として利用する目的で加入するといいかもしれません。
②終身年金
確定年金は年金が受けとれる期間が決まっているものでしたが、一生涯年金が受けとれるのが「終身年金」です。確定年金の場合は、例えば10年確定年金で60歳から年金を受けとっていれば、70歳までで年金が終わってしまいます。しかし終身年金ならば、80歳まで生きれば80歳までの20年間年金を受けとることができます。
終身年金は、同じ保険額で設定すると確定年金より割高になり、返戻率が下がってしまいます。しかし一生涯受給することができるため、公的年金だけでは生活費が不安だという人に向いています。
③変額年金
積み立てた資金を保険会社が運用して、その運用成果によって受けとれる年金額が変動するのが「変額年金」です。運用成果によっては年金額が大きくなったり、逆に払い込んだ保険料の総額よりも少なくなって損してしまうこともあります。リスクが高いため、確定年金や終身年金に比べると、加入者は少ないです。
変額年金はリスクを抱えることができる、資金に余裕のある人は加入するといいでしょう。他の資産運用と併用してリスクを分散させる目的で加入することをおすすめします。
★保険料の払込方法
保険料の払い込み方法には月払いと年払いがあります。保険のプランによりますが、一般的に月払いよりも年払いの方が利率が少し良くなります。資金的に可能ならば、年払いにする方がいいでしょう。また保険料の払込期間も短いほど返戻率が高くなります。ある保険会社のプランでシミュレーションしてみましょう。
・契約者:30歳男性
・年金受け取り期間:10年
・月払い保険料:5万円
・受給開始年齢:65歳
上記の条件で保険料の払い込みを60歳までにすると、返戻率は「125.8%」と非常に高くなります。しかし払い込みを受給開始年齢の65歳までにすると、返戻率は「123.5%」と3%以上低くなってしまいます。保険によって設定できる払込期間は変わってきますので、資金的に余裕のある人は、払込期間を短期間に設定できるかどうかも、比較する際のポイントにしてみるといいでしょう。また、大抵の保険では「一括払い」が可能になっています。数百万円単位になるためなかなか難しいと思いますが、これが理論上もっとも返戻率が高くなります。
ちなみに、多くの保険会社のサイトを見れば、その保険のプランの返戻率を計算することができるようになっていますが、自分の設定したいプランでは返戻率を算出することができないということもあるかと思います。そのようなときは以下の計算式で、自分で計算してみましょう。
①月払いの保険料×12ヶ月×払込期間=払い込む保険料の総額
②1年あたりに受給できる年金額×受給期間=年金の受給総額
③年金の受給総額÷保険料の総額×100=返戻率
多くの場合、年金の受給総額はサイトを見れば分かります。簡単な計算ですので、保険に加入するときには、毎回計算してみて、返戻率はどのくらいになるのか把握しましょう。返戻率は個人年金を比較し、選択する上でもっとも重要なポイントなのです。
★年金はいつからもらうか?
年金の受け取りは、たいてい仕事を引退してからになります。現在ならば65歳からがもっとも多いでしょう。しかし公的年金の支給が65歳からになっており、仕事を60歳に引退する予定ならば、60歳から年金を受け取ることのできる個人年金に加入しなければなりません。また個人年金とは別に貯蓄をしているため、先にそちらから取り崩して使う、という人もいるかと思いますが、貯蓄が10年分あるならば、個人年金の受給は75歳からでもよくなります。つまりその人のライフプランによって、最適な受給年齢を決めるべきだということです。
年金を受け取る年齢は、60歳もしくは65歳から、5年おきに80歳くらいまで設定できることが多いです。まずは老後のライフプランを明らかにした上で、自分にあった受け取り年齢を設定できる個人年金を見つけましょう。
★ポイントを抑えていれば最適な個人年金が必ず見つかる
個人年金保険を比較する上でのポイントを整理すると以下のようになります。
①契約の目的を明らかにし、個人年金のタイプを選択
②自分のライフプランから、受給期間、保険料の払込期間、年金額を決める
③同じ条件下でもっとも返戻率が高いものを選択
この簡単な3ステップで、最適な保険を見つけることができるのです。ポイントさえ把握していれば、自分にあった保険は必ず見つけることができます。最初の手間はめんどくさがらずに、より有利な個人年金に加入しましょう。