確定拠出年金とは?種類について
会社にお勤めの方の中には、「確定拠出年金」という名前を一度は聞いたことがあるという方もいるのではないでしょうか。確定拠出年金とは、2001年から開始された「私的年金」の1つです。
現在、国から受け取れる老後の年金として、「国民年金」と「厚生年金」の2種類がありますが、以前はこの年金の受け取り開始年齢が60歳であったのに対し、今は65歳へと5年間受け取れる時期が遅くなっています。
このような社会保障制度の変更とは別に、会社では今でも定年退職年齢を60歳としている会社も多く存在しており、年金の受け取りが開始される65歳までの5年間、「無収入期間」が出てしまうための補てんとして確定拠出年金を導入する会社が増えてきました。
また、以前は従業員の退職金を会社が積み立てていましたが、その退職金の積み立てを外部に委託し、また、少ない積立金でも、運用の成果によっては大きな退職金額となるよう、運用商品としての特徴を持つ確定拠出年金で従業員の退職金作りをしようと導入する会社が増えてきました。
このようにして広がっていった確定拠出年金ですが、実はその種類は2種類に分類することができます。「企業型確定拠出年金」と「個人型確定拠出年金」の2種類です。
今回は後者である「個人型確定拠出年金」について、その内容とメリット・デメリットについてご紹介していきます。
確定拠出年金は前述のとおり、「私的年金」と呼ばれ、国民年金や厚生年金で受け取れる年金額を補うものとしての役割を果たします。そのため、「上乗せ年金」とも呼ばれます。仕組みとしては、会社もしくは個人の方が毎月掛け金を支払い、その掛け金をあらかじめ指定された複数の運用先の中から、どこにどれだけの割合で運用するかの配分を設定します。
その運用先・配分の成果に応じて運用成果が良ければ満期時に受け取れる金額が掛け金の総額よりも増え、逆に運用成果が悪ければ満期時に受け取れる金額が掛け金の総額よりも少なくなります。
先ほどご紹介した「企業型確定拠出年金」とは、会社単位で加入する確定拠出年金となっており、毎月の掛け金を会社が支払い、その積み立てられたお金は従業員の積み立て金として積み立てられます。企業型確定拠出年金の場合、3年未満に会社を退職した場合はそれまで積み立てたお金を会社に返金しなければいけないといった条件や、3年経過後に退職し、次の転職した会社で確定拠出年金を導入していれば、引き継いで継続することができるといった特徴があります。
このような特徴の企業型確定拠出年金に対し、個人型確定拠出年金とは、個人の方が任意で加入する確定拠出年金となります。加入は個人単位で行うのですが、企業型確定拠出年金に加入している会社員の方は加入することはできず、加入できるのは企業型確定拠出年金を導入していない会社に勤めている会社員の方、自営業者の方や専業主婦の方、企業型確定拠出年金を3年以上継続した後に退職し、次の企業型確定拠出年金の加入はできないが継続したい方などです。個人単位で加入するため、毎月の掛け金は個人の方が支払います。
企業型確定拠出年金に加入できる方、個人型確定拠出年金に加入できる方を図で示すと以下のようになります。
[確定拠出年金の加入対象者]
また、確定拠出年金に支払う毎月の掛け金には限度額があり、毎月いくらでも掛けられるというものではありません。確定拠出年金の掛け金の限度額は以下のようになっています。
[確定拠出年金限度額表]
これまで、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金の内容について見てきましたが、個人型確定拠出年金に加入する上でのメリット・デメリットは何でしょうか。こちらについて見ていきましょう。
個人型確定拠出年金のメリット・デメリットは以下となります。
メリット
・掛け金の全額が所得控除の対象となる
・運用の分配金が非課税で受け取れる
・満期時の年金も非課税で受け取れる
デメリット
・満期(60歳まで等)までお金を受け取ることができない
・企業型確定拠出年金を導入している会社に就職した場合、その資格を失う
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
まずメリットの1つ目として、「掛け金の全額が所得控除の対象となる」とありますが、通常、自営業者の方も会社にお勤めの方も、収入がある方は所得税を支払います。所得税の計算方法として、額面の年収に対して様々な控除(税金を計算する上で引くことができるもの)できるものの金額を差し引いて、残った金額に対して所得税の税率を計算します。
この控除できるものとして個人型確定拠出年金に支払った掛け金を含めることができるため、最終的に所得税の税率を計算するための残った金額を減らすことが出来るのです。
所得税の税率は年収の応じて変わり、年収が高い人ほど税率は高くなります。
例えば年収700万円の方は所得税の税率は30%となります。この方が毎月30,000円の掛け金を個人型確定拠出年金に支払っていた場合、年間で360,000円支払っていることになり、確定申告をすると360,000×30%=108,000円が返ってくるという計算になります。定年後の資産を積み立てながらも、毎年の確定申告により、確定拠出年金に支払った金額の一部が返ってくるということは非常に大きなメリットです。
また、確定拠出年金は複数の運用先から指定して運用するのですが、その運用先の成果が良いと毎年分配金が掛けている方に支払われます。この分配金の受け取りに関しても、税金がかからずに受け取ることが出来るのです。通常、株式などの配当金を受け取る場合、配当所得と呼ばれる税金がかかるのですが、確定拠出年金における分配金は税金がかからないということは大きなメリットです。
最後にもっとも大きなメリットは、数十年に渡り積み立てていった年金を受け取ろうとした時に非課税で受け取ることができることです。数十年に渡り積み立てた年金額は高額であるため、これに税金がかかってしまうと、税金額も非常に高額となってしまいます。確定拠出年金で積み立てられた年金は税金がかからず非課税で受け取ることができるため、積み立てたお金、運用の成果によって増えたお金をそのまま受け取ることができるのです。
このようなメリットに対して、デメリットは満期となる時期まで引き出すことができないという事です。確定拠出年金を途中で解約した場合でも、解約時点で掛けたお金を受け取ることができず、契約当初に設定された年齢に達するまで受け取ることはできません。流動性に欠けてしまう点はデメリットであると言えます。
また、個人型確定拠出年金に加入しており、途中に転職し転職先の会社で企業型確定拠出年金を導入していた場合、自動的に企業型確定拠出年金に加入することになるため、それまで掛けていた個人型確定拠出年金は転職以降は掛けることができなくなり、それまで掛けたお金を満期まで運用する方法しかとれなくなってしまいます。
このように、個人型確定拠出年金にはメリット・デメリットがありますので、これから加入を検討している方は、将来の計画(ライフプラン)を決めて加入されると良いでしょう。