貯金や郵便局、預金は銀行にお金を預けることですが、同じ様に保険商品にお金を預ける「積立」もあります。これを俗に「積立保険」と呼ぶことがありますが、専門用語でいうと「養老保険」という商品に入ります。
養老保険とは、その名の通り「老いては養う」…つまり、働けなくなった年齢になった場合、今まで貯めたお金で余生を暮らす、という名の保険商品です。30年で3000万円貯めた場合は、余生を3000万円で暮らせばよく、1000万円ならば1000万円で暮らせば良い、というものです。
ただ、3000万円が60歳で手に入るには、現役時代にこつこつとお金を貯めなければなりません。ただ、銀行の場合は預金に金利が上乗せされます。3000万円を貯めるには、2500万円でもよいかもしれませんし、1800万円かもしれません。預金金利が高ければ、それだけ少ない金額で積立できますが、ゼロ金利では、まるまる3000万円必要です。
では、養老保険ではどうでしょうか?
まず、60歳を満期、と仮定しましょう。60歳で3000万円満期、と決めるのです。30歳から毎月積み立てるならば、3000万円÷30年=100万円/年です。結果、8.3万円/月貯めるとよいことになります。ただ、養老保険も金利が付きますから、月々7万円代の積立で3000万円になるかもしれません。
これだけの話ならば、銀行貯蓄も養老保険も変わりない、と思われるかも知れません。ですが、養老保険の最大のメリットは「保険の機能」が付いていることです。
30歳から毎月7万円を積み立てていたとします。ところが、35歳で万が一病気や怪我で死亡してしまうと、どうなるでしょうか?貯蓄の場合は、貯まっている分が「満期」となり、遺族が手にすることになります。ですが、保険の場合は死亡以後の積立保険料は不要。遺族はその時点で3000万円を受け取るのです。
ここで、根本的に違うのは「預金」「貯金」は自分のためのもの、兼家族のための貯蓄です。ですが、養老保険は、自分のためのもの 兼「遺族のため」の保障です。もし、預金と保険が毎月同じ金額を支払って貯蓄するならば、養老保険の場合は「無料で保険機能が付いて来る」と考えてもよいわけです。
養老保険には「学資保険」「年金保険」といった商品も含まれます。また、養老保険のほかに「終身保険」という別の商品もありますが、これは月々支払って貯蓄ができ、頃合いを計って解約すると、掛け金分より多くの解約返戻金が受け取れるため、貯蓄代わりに加入する人もいるのです。
ここまで読めば「それなら、養老保険は得だから絶対契約しよう」という方がいらっしゃるかもしれません。ただ、生命保険は本当に「モトが取れる」商品か、といえばそうでもないケースもあることを知っておく必要があります。
まず、養老保険のケースです。養老保険は最初から満期保険金が約束されていますから、安心して貯蓄代わりに加入することができます。が、生命保険は「誰でも」加入できるわけではありません。例えば、過去2年間に大きな病気で入院した経験のある方、手術経験、あるいは事故の後遺症など、様々なハンディの方は加入できないか、割増保険料を払わなければなりません。
養老保険の場合は多くの生命保険商品の中でも最もこの「割増」の割合が少ないのですが、それでも生命保険の設計上「健康な人」に安い保険料、「そうではない人に」割増保険料という大原則があるのです。 もし割増保険料が付いた場合、結果的に払い込み累計で、元本割れすることもありえます。ですから、保険を貯蓄のため…と考えるなら、人によっては保険は向いていない可能性もあります。
もう一つはインフレという経済状況です。例を出せば、住宅ローンがこれに当たります。経済が上向きになると、物が売れ、住宅もどんどん販売されますので、住宅ローン金利は上がっていきます。ところが、その逆の場合は物が売れないため、住宅ローン金利は下がっていきます。
養老保険も同じことが言えます。養老保険で4,000万円を貯めるのに、4,000万円を支払ったとしましょう。ところが、インフレになると様々な物の値段が上がり、銀行金利も上がっていきます。無論住宅ローン金利も上がりますが、そうなると4,000万円の価値は、10年前、20年前の4,000万円とは違い、実際には3,500万円、3,200万円程度にしかならない可能性もあるのです。
保険は毎年見直すような物でもありませんし、車の買い替えのように5年、7年ごとではありません。長ければ20年、30年と平気で掛け続けていくのです。だからこそ、生命保険は時代に合わせる「自由度」のある物を選ぶのが一番です。 ここでいう自由度とは、掛け金はそのままに形を変えたり、積立機能があったり、貸付ができたり、あるいは解約返戻金が経済の動きにリンクして上下するなど、柔軟さのある商品を指します。
つまり、生命保険は加入して数年で解約し、また加入して…というのは一番無駄な掛け方といえます。だからこそ、こうした無駄でモトの取れない掛け方から身を守るのにも、保険FPと呼ばれる実績のある担当者から相談に乗ってもらうのが絶対に有効だと言えるのです。